千と千尋 夢だ夢だ。 映画『千と千尋の神隠し』評価は?ネタバレ感想考察/ハクやカオナシの正体は?豚になった理由?

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映画『千と千尋の神隠し』評価は? 29更新 『千と千尋の神隠し』あらすじ概要。 米国アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。 ちひろと両親は引越し途中で異世界に迷いこみ、豚にされた両親を戻したい千尋はハクに救われ、湯婆婆の温泉宿で働くが…。 0億円 () 世界興行収入 3. 批評家と一般は単純平均 ネタバレ感想『千と千尋の神隠し』考察や評価レビュー この先は ネタバレありの感想考察です。 続編前作や関連映画は、も参考にしてください。 監督の宮﨑駿(はやお)は、日本どころか世界中で知られるアニメーター・映画監督です。 ジブリ制作の映画のヒット作はほとんどが宮崎駿による監督作です。 少年少女を主人公としたファンタジー作品が人気です。 『千と千尋の神隠し』も、宮崎駿の知りあいの娘から聞いた話が原案らしく、10歳くらいの少女が楽しめるアニメ映画を目指して制作されたそうです。 確かに少女の記憶や初恋が描かれてますが、大人にはダークな面も見える作品です。 ジブリ作品では専門の声優ではなく俳優や芸能人などのタレント声優を使うことが多いのですが、本作でも千尋の声はまだ女優・声優としての経験も浅い柊瑠美(ひいらぎ るみ)が担当しています。 最初は少し違和感ありますが慣れてきます。 ハクの入野自由もまだ駆け出しだからか、最後まであまり絵に合わない話し方だと感じました。 そんな入野自由も今では多くの作品で経験値を積んで『』主人公の石田将也などで素晴らしい実績を残してます。 湯婆婆(ゆばーば)と銭婆の夏木マリ、坊(ぼう)の神木隆之介、釜爺(かまじい)の菅原文太、千尋の母の沢口靖子、番台蛙の大泉洋などはセリフ少ない人もいるけど違和感ないです。 千尋の父役の内藤剛志だけは少し浮いてる感じです。 テーマは「欲望による破滅や自然破壊。 本当に大切なもの。 名前や記憶」 『千と千尋の神隠し』はジブリ作品の中でも、かなり深い話で様々な考察がされています。 テーマの感じ方も人によっていろいろでしょうけど、私は上の3つが主要テーマだと思いました。 得体の知れない食事を食べた 両親は、食欲の欲求に負けてしまい豚にされます。 砂金の誘惑に負けた青蛙は、カオナシに飲み込まれます。 自我や「自分」を持たなかったカオナシは、欲深い人々を飲みこむうちに欲望の塊になり怪物化します。 このように食欲やお金の欲望に負けて破滅しそうになる人々とは対称的に、 千こと千尋は最初の食事や砂金を断り続けて「純粋な心」を貫き通します。 そして 本当に大切なものである、両親とハクを救うことだけを望み行動し結果を出します。 千尋が現実に戻れたのは、そういう行動の成果ですが「名前」を忘れなかったことも幸いしてます。 湯婆婆に名前を奪われると、ハクのように支配されます。 千尋は引っ越し前の同級生からの手紙に「ちひろ」を見つけて名前を思い出します。 千尋は名前以外に、ハクに幼少期に救われた記憶を思い出します。 銭婆は「 記憶は失われない。 思い出せないだけ」と言います。 両親と現実に戻った後、千尋はハクや湯婆婆のことを忘れたかもしれないけど、いつか思い出すかもしれません。 千尋はハクに初恋のような感情を抱きますが、ハクの正体が川だと考えると、 資本主義的な物質文明の犠牲で起こる自然破壊への抵抗にも感じられます。 まだ純粋な千尋は、人間的な欲望より自然を選んだのでしょう。 両親が豚になった理由は?現実へ戻れた理由は? 千尋の両親がブタになった理由は、美味しそうな食事のにおいにつられ、 欲望や欲求のままに食べてしまったからです。 千尋だけブタにならなかった理由は、食事を食べたり欲望のままに行動しなかったからでしょう。 ラストで、坊の口ぞえもあり、湯婆婆は千尋にチャンスを与えます。 冒険で成長して欲にもまみれない千尋は、豚の中に両親がいないことを見抜き、ついに両親をもとに戻してもらい一緒に現実社会へ帰ることができます。 「名前を奪われなかった」ことも、千尋が現実に戻れた理由の1つです。 千尋は湯婆婆の契約書に、間違った本名(荻野を获野)を書いたのです。 湯婆婆のうさんくささを感じからでしょうか。 ハクは本名を書いてしまったのでしょう。 腐れ神の正体は?ニガダンゴとは? 腐れ神(オクサレ様)は全身が泥まみれで強烈なくさいニオイを放ちながら、湯屋へやって来て湯船につかります。 その近くの食事が腐るほどです。 千尋がトゲを抜くと大量のゴミが飛び出て、本来の姿「 名のある河の神」にもどります。 名のある河の神(主)は、 人間が捨てたゴミを長い期間蓄積してオクサレ様になったようです。 名のある河の神は千尋に、丸い「ニガダンゴ」をお礼として渡し、温泉を「よきかな」と感じて、半透明の白い龍として空へ飛び立っていきます。 ニガダンゴは千尋が食べてもただの「苦い団子」ですが、傷ついた白竜の ハクに無理やり食べさせると「銭婆の判子」と「判子にかけられた呪い」と「湯婆婆の支配の魔法」を体内からはき出させました。 欲望まみれで肥大化したカオナシにニガダンゴを食べさせると、喰われた青蛙や人間たちや泥などをはき出しました。 千尋はブタになった両親に食べさせるつもりだったので「 体内を浄化し悪い物をはき出させる薬」のような効果がありそうです。 カオナシの正体と目的とは?最後は… カオナシの正体は、自我や「自分」を持たない黒い影のような存在です。 明確な正体は本編でも明かされませんが、千尋に一目ぼれして気に入られるためにつきまとうストーカーのようで、飲み込んだ他人の自我や言葉を奪って大きくなります。 カオナシは、自分を持たず周囲の人から影響を受けたり、特別な家族や友人の偉業を自分のアイデンティティに重ねたりする現代人を皮肉ったような存在です。 自分を持たないからこそ、他人のアイデンティティを取り込もうとしたのでしょう。 カオナシは飲みこんだ者の欲求を引き継ぎ、大量の食事で食欲を満たします。 そのために、腐れ神の時に学習した砂金をばらまき、自らの価値を過大評価させます。 カオナシの最終目的は「千尋がほしい」のですが、断られて暴走します。 暴走したカオナシは、千尋のニガダンゴを食べて全てをはき出し、元の姿に戻って静かに千尋についていきます。 最終的に カオナシは、銭婆(ぜにーば)の家に引き取られます。 ハクの正体とは?その後は? ハクの正体は、白竜にも変身できる「コハク川」の川の神で、本名は「ニギハヤミコハクヌシ」です。 幼い時に川でおぼれそうになった千尋を、川の流れで救ったことがあります。 今回も湯婆婆の前以外では、最後まで千尋の味方です。 湯婆婆に「名前を奪われて」忘れたため支配されましたが、 千尋のニガダンゴのおかげでその魔法は解かれ、千尋の記憶により本来の名前も取り戻しました。 しかしすぐ現実に戻れた千尋とは違い、元の川にもどれたかは不明です。 千尋が冒頭でトンネルをくぐってすぐに「かれた川」を見つけたり、名のある河の神がゴミから解放されて龍になって飛んで行ったのも、ハクに関する伏線だったのでしょう。 自然破壊でコハク川がかれたり埋め立てられたりした状態では、元に戻れないかもしれません。 湯婆婆と銭婆は双子?坊の存在意義は? 湯婆婆と銭婆は、性格が対称的な双子の老魔女です。 湯屋「油屋」を経営する湯婆婆は強欲のかたまりで、銭婆の契約の判子までハクに盗ませようとします。 銭婆は「 二人で一人前」と言うように、湯婆婆と違い「沼の底」で質素に暮らします。 湯婆婆は口うるさい反面、社会からあぶれた者に働き口を提供していたり、腐れ神も含めて八百万の神々に癒やしをほどこすサービスをきっちりこなしているので、なくてはならない存在です。 坊の存在意義はよくわかりませんが、忙しい湯婆婆があまりかまってやれず、おもちゃや食事を要求されるままに与えて甘やかしすぎて膨張した赤ちゃんだと感じます。 ワガママ放題だった坊も、千尋との旅で成長したようです。 全ては千尋の夢?エンドロール後の意味は? 『千と千尋の神隠し』は全てが千尋の夢だったと考えると、ブタの記憶をなくした両親ともつじつまがあいますが、夢ではなかった理由がいくつかあります。 まず、両親の車の上に葉が落ちたりして数日経った形跡があります。 また、 出口のトンネルが入り口と形が違ったのも、異界にまぎれこんでた事実をあらわしてそうです。 最も重要なのは、 銭婆からもらった「髪どめ」です。 ねずみにされた坊とハエにされた湯バードとカオナシも協力して紡いだ糸を編み込んだ髪留めは「お守り」として渡されました。 現実に戻り何かを思い出そうとする千尋の髪留めが光ります。 エンドロール中、千尋のなつかしい記憶を表すような静止画がつづきます。 一番最後には、川に流された靴のような絵が見れますが、これは コハク川に流された千尋の靴ではないでしょうか。 『千と千尋の神隠し』私の評価とジブリ作品 『千と千尋の神隠し』はの中では、最も深みや考察しがいのある映画で、2回目3回目と観るごとに新しい発見や気づきがあります。 両親に甘えてた千こと千尋が、 仕事したり自力で問題解決していく少女の成長物語です。 その過程で、 名前の大切さ、なくした記憶の重要性、初恋などを体験し、やがて自立に向かいそうです。 その一方で、湯屋という水商売を連想させるような場所で小学生を働かせたり、欲望にまみれた大人の悲劇も見せたりと、かなりダークなテーマもあつかっています。 キャラが多い半面、浅くしか描かれてないのは少し残念です。 説明過多は望まないけど、もう少し説明がほしいなとも感じました。 続編前作や関連映画は、も参考にしてください。 『千と千尋の神隠し』シリーズ順番・映画ランキングや映画賞•

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君と私の最終章【千と千尋の神隠し】

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最近、ニュースサイトで『千と千尋の神隠し』のタイトルを見かけることが増えました。 2001年に公開されて観客動員数 2350万人、興行収入304億円の日本映画史上第1位の記録はまだまだ健在です。 父親の明夫は38歳から53歳、母親の悠子は35歳から50歳になっている計算です。 バブル世代の申し子を両親を持ったひとり娘は今ごろどうしていることやら。 千尋のモデルとなった千晶の父の奥田プロデューサーは1956年生まれで、実際にはバブル世代よりはもう少し上。 訪れてみたいのですが、こんなツイッター眺めてしまうと行く前から気が遠くなってしまいます。 この湯屋「油屋」の建物は映画の公開当初から多くの人の関心を集め、そのモデル探しがおこなわれ、有名になったところがいくつかあります。 この関心の高さは一体どこから来るのでしょう。 もちろん遠い昔には丹前風呂などの名があって、江戸でも風呂屋と呼んでいたらしいが、風呂屋の名はいつか廃れて、わずかに三馬の「浮世風呂」にその名残りを留めているに過ぎず、江戸の人は一般に湯屋とか銭湯と呼び慣わしていた。 それが東京に伝わって、東京の人もやはり湯屋とか銭湯とか呼ぶを普通とし、たまに風呂屋などという人があれば、田舎者として笑われたのであるが、この頃は風呂屋という人がなかなか多くなった。 やがては髪結床を床屋、湯屋を風呂屋と呼ぶのが普通になるであろうと云っていると、果してその通りになった。 幼い頃に身近にあった、ランドマークの煙突と湯上がりの珈琲牛乳に象徴される銭湯。 そこは子供にとって楽しい異次元の世界。 好きだった銭湯はけっこう広くて、脱衣所から風呂場を分ける磨りガラスの重たく大きな戸をガラガラと開けると「電気風呂」「薬草風呂」「サウナ」などいろいろな浴槽たちが迎えてくれました。 脱衣所で扇風機にあたりながら、ガラス越しに見える小さな中庭の植栽に子供ながらも日本の風情を感じたり、まだ小学校にプールのなかった昭和の子供たちには最高のワンダーランドでした。 油屋のモデル 子宝湯(江戸東京たてもの園)+ 道後温泉本館 + 目黒雅叙園 + 鹿鳴館 ただ、このような声が全国から寄せられたことからわかるのは、「千と千尋の神隠し」の湯屋が、ちょっと昔の日本では珍しくなかった建物を「象徴的に再現」しているという事実です。 こうした点も、「千と千尋の神隠し」で描かれた風景が多くの日本人の琴線に触れ、感動を与えた一因なのかもしれませんね。 あれは鹿鳴館であり、目黒雅叙園です。 日本人にとって豪華というのは、御殿と洋風(擬洋風)と竜宮城がごちゃごちゃになってて、そこで洋風っぽく暮らすことなんです。 もともと湯屋っていうのは、今のレジャーランドみたいなところで、室町時代にも江戸時代にもあったものです。 結局僕は日本を描いているんです。 日本人が最高に郷愁を感じる「湯屋」をつくりあげたわけです。 もしほんとうに温泉旅館「油屋」があったなら 浙江省杭州市衆安橋のオフィスビルの一角 アニメは小さな画像を大きなスクリーンに拡大するので、実写映画のように実物大とかの模型をつくることはプロモーション用以外はあまりありません。 今回は 3mの模型ですので、次は実物大、しかも本当に入浴できる温泉施設の「油屋」を見てみたいもの。 猿投温泉 となりのトトロの「サツキとメイの家」のある「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」の近くに「猿投」という地域があり、「医学の湯」といわれる優れた効能を持つ天然ラドン温泉があります。 このあたりにジブリ公認の温泉施設として実物の「油屋」があればと夢見ることがあります。 座敷でぐるりと囲われたなかでの入浴は大変勇気がいります。 そこで温泉の天井部分は薄い膜で覆って、上からは入浴中の神様たちの姿、浴場側は、逆に見上げる吹き抜けの座敷の遊ぶ神様たちの姿をプロジェクションマッピング。 実際には建築基準法やら色々クリアするには問題が多そうですが、想像するだけでワクワクします。 伊勢湾台風の影響で水没した名古屋鉄道の常滑線において、水没した海上に仮線を敷設し海面スレスレのところを運行し乗客を乗せていたできごとがモデルといわれています。 さらに他の建物も記念公園に建て、名鉄の舞木検査場に保存されている名鉄3400系電車(いもむし)を復活して愛知環状鉄道に走らせ、広域のジブリ建物パークみたいに発展すればと夢は膨らみます。 ここにも「不思議の町」がありそうな。 猿投から飯田街道(国道153号)を矢作川に沿って南下、平戸橋というところにある丘の上の住宅街が見える場所。 昔から(実際には道は右にカーブしていきますが)そのまま坂を登りきると、見通せないその先に不思議な町がありそうな、いつもそんな気がする場所です。 ジブリパークが愛知に!トトロの世界観を再現、2020年代初頭の完成目指す 「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」などのアニメ映画で知られるスタジオジブリ(東京都小金井市)が、愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)を「ジブリパーク」に生まれかわらせる。 これはスタジオジブリと同県が協力し、宮崎駿による長編アニメーション「となりのトトロ」の世界観を再現したエリアを、約200haある同公園の敷地内に設置するというもの。 『となりのトトロ』だけではネーミングは「トトロパーク」のほうが似合うかも。 「ジブリパーク」と銘打つなら各作品をエリア別に配置して欲しいものです。 特に『千と千尋の神隠し』は欠かせませんね。 続きは、 「」 本日の一本。 バブル世代の申し子である千尋の両親たちの青春物語。 映画『就職戦線異状なし』.

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25歳になった千尋_夢見る温泉旅館「油屋」

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夢の回廊 夢の回廊 ハクセン祭投稿作品 「千、悪いけど買い物行ってきてくれる?」 湯女の1人にそう声をかけられた千尋はえっ、と動きを止めた。。 まだ客が起き出す時間ではないがもうそろそろ夕暮れがやってきて本格的に始まろうかという微妙な時間。 千尋も割り当てられた持ち場で働いていたところで、こんな時に外への買い物を頼まれる事は滅多にない。 「今……ですか?」 訝しげに思いながらそう訊ねると、湯女は苦笑を浮かべた。 「あたしがついているお客様が今でないとって言われててね。 父役の許可はとってあるからさ」 どうしようと思いながら一緒に働いているリンに視線を向ける。 リンは肩をすくめてみせた。 「客がそう言ってんだったら仕方ねぇよな。 「うん……じゃお願いね」 ブラシをおいて湯女の処まで行くと湯女は懐から一枚の紙切れを出した。 「欲しいものはここに書いてあるから。 「分かる……と思います」 もし迷ったら店の人(?)に聞けば良いだろう。 千尋が湯屋で働いている唯一の人間である事は湯屋にいる者ならば誰でも知っている事だし、彼女がハクと坊のお気に入りである事も皆周知の事実であるので、人間だからといって危害を加える者はいなかった。 「じゃ頼むね。 あたしは硫黄の湯にいるからさ」 「はい」 湯女が去っていくのを見送り、千尋は紙切れを懐へと入れた。 夕暮れ時の町に出るのは久しぶりだ。 真実の名を取り戻した今となっては千尋にとって夕暮れは何の意味もなさない。 目指す店は階段を下った先にある。 とんとんと軽やかに階段を下りていた千尋は、ふと気配を感じて立ち止まり後ろを振り返った。 「………?」 まだお客が歩き出すには少し早い。 だから人影はないはずだった。 (……なに?) そのままじっと見つめても人影は見えない。 (気のせいかな……?) そう思いながら前を向いて再び階段を下りていく。 耳をすましながら歩くと、自分以外の気配が確かに感じられた。 「……!」 くるっと振り返るとさっと隠れる人影が確かに目に入ってきた。 さきほどと同じ、黒い人影。 (何……何なの?) たまにちょっかいを出して来る精霊がいない事もないのだが、それは友達とじゃれる時のような軽いもので、ここまで不安を煽るものではなかった。 しばし立ち尽くしていた千尋だったが、辺りがだんだんと暗くなってきているのに気がついてかぶりを振った。 「……こうしてても仕方ないよね……」 ともかく仕事を済ませなければならない。 幾ら外出の許可が出ていても帰るのが遅くなれば嫌みを言われることは必須だ。 そう思いながら階段を下りきり、道に沿って曲がる。 「……え」 道の向こうにあるはずの店は無く、なだらかな坂道が続いていた。 坂の両脇には店が並んでいるものの、まだ客が来る時間ではないと思っているのか扉は固く閉じられている。 「記憶……違い、かな……」 自分以外に人影はない。 不安からか千尋は考えている事を声に出しつつ辺りを見回した。 振り返れば今下りてきた階段が見える。 「道を間違えた……?」 だが何故かその階段を登ろうという気にはなれなかった。 とすれば眼前にある道を進むしかない。 ごくりと息を呑み、千尋は意を決して足を踏み出した。 明らかにおかしい。 恐らく感覚的にもう1時間くらいは歩いているはずだ。 「おねえさまから「ちょっと買ってきて」と頼まれて行くお店がこんなに遠い訳ない……っ!」 もしかしたら、という淡い期待を抱いて歩き続けていた千尋だったが、いくら不思議な事が多く起こるこの場所だとしても明らかにおかしい事態である事を認めざるを得なくなっていた。 「一度戻って、もう一度道をたどってみよう……」 それで駄目なら湯屋に戻ってお客様に謝るしかない。 そう思ってきびすを返し、元来た道を歩き始めた千尋であったが。 「……何で、景色が変わらないの……?」 歩いても歩いても景色が変わらない。 いや、ちゃんと自分が歩けば景色は流れていくのだが、いつまでたっても同じ景色ばかりが見えてくるのだ。 まるで迷路に迷い込んだかのように。 そう考えてぞくっと背筋に寒気が走った。 もちろん迷い込んできた人間を"町"が疎ましく思って迷い込ませる可能性がない訳ではない。 だが千尋は湯婆婆と契約を交わしたれっきとした従業員であり、この世界に存在する事を許された者。 「どうして……? 私、何かしたっけ……」 "理"を破るような事をしでかしたかと考えてみるも特に思い当たる節はない。 万が一千尋がそんな行動をしそうになれば、ハクが止めてくれるはず。 「そう……ハクに助けを……」 気が動転してしまっていたが、念をこめればきっとハクが気がついてくれる。 千尋は邪魔にならないように道の脇にしゃがみ込み、手を祈りの形に組み合わせた。 くらり、と目眩を感じて千尋は額をおさえた。 「なんだろ……」 貧血かとも思ったがすぐに違う事に気がついた。 「眠い……の? 私……」 意識に霞がかかり始めている。 自然な、だが明らかに強制的な何かを感じる眠りがひたひたと忍び寄ってきている。 そんな気がする。 そうは思うものの、痛みならまだ我慢もしようがあるが、睡魔に抗うのはなかなか難しい。 (眠っちゃ駄目だ…) 口に出して言ったつもりが、僅かに唇が動いただけで言葉にはならない。 そのまま千尋は古びた壁にもたれかかってしまった。 湯屋から千尋の気配が消えた事に気づき、帳簿の整理をしていたハクは立ち上がった。 (仕事が始まる時間だというのに湯屋から出る等あり得ないことだが……) 湯屋の従業員や常連客ならば千尋がこの湯屋にいる事はごく当たり前となっているが、一歩外に出ればそれを良く思わないものもやはり存在する。 しかしそれを千尋に伝えて必要以上に怖がらせるのも……と思い、敢えて彼女には伝えてはいなかった。 部屋を出て千尋が働いているであろう場所へと歩いていく。 仕事の時間に現場へと出向く事のないハクが厳しい顔をして歩いていくのを見かけた従業員たちが何事かとその後ろ姿を見送る。 だが誰も「どうしたのですか」と声をかける事は出来なかった。 「んだよ、オレぁ忙しいんだよ」 風呂釜の掃除をしていたリンが不機嫌そうな顔を向けた。 「千がいない間はオレ1人なんだからな。 邪魔すんなよ」 いつも共に働いているはずの千尋の姿はない。 「千は何処へ行ったのだ」 その場を立ち去る様子のないハクに、リンはブラシをがん、と床に音をたてて立てた。 「あんな……オレぁ忙しいって言ってんだろ」 「千は何処へ行った」 全く話を聞いていない。 リンははぁとため息をついた。 「客の1人がどーっっしても必要なモンがあって買ってきてくれって言ってるらしくてよ、それを買いに外へ出たぜ」 その言葉を聞いたとたん、ハクはきびすを返して歩き出した。 「おいっ!」 礼の一つもなしかよ! というリンの言葉はハクに届いていない。 そのまま歩き去ってしまったハクを見送り、リンはもう一度大きなため息をついたのだった。 湯屋の外に出た途端、ハクはあるはずのない「歪み」を感じ取って足を止めた。 「……空間の歪み……」 ここまで大きい術を使っていれば湯婆婆が気がつかないはずがない。 それを敢えて放っているのはあわよくば……を考えているためか。 (ともかくは千尋を助け出すのが先だ) ハクは歪みが感じられる方へと走り出した。 店が並ぶ大通り。 見ただけでは分からないが、この先に千尋が閉じ込められている。 すっと空間に向けて手をかざす。 ぱりん……と耳障りな音が聞こえ、目の前の景色にひびが入った。 何処までも広がる、無限の階段が。 「空間を無限に繋げただけか……」 ハクにとっては低級な術であっても魔法の力を持たない千尋にとっては、これが術である事を見破る事すら難しいだろう。 穴をくぐって造られた空間へと足を踏み入れる。 湯屋に良く来る者ならばこの娘に手を出す事が自殺行為である事を知っている。 空間が閉じつつある事を確認しながら歩みを進めていくと。 (目を覚まさない……?) 傍らにひざまづき、彼女の体に触れても千尋が目を覚ます様子はない。 そっと額に触れると、微かに魔力の痕跡を感じた。 ハクは千尋の体を抱き上げた。 意識を引き上げるにしても、こんな道端でするよりは湯屋の部屋のなかで術を行使した方が効きも良い。 「千が目覚めないって本当かっっ!!」 早速聞こえて来た大声にハクは眉をひそめた。 「……これから術の行使です。 ハクの部屋に敷かれた布団の上で千尋はすーすーと寝息をたてている。 うなされる様子もなくごく普通に眠っている様子からは、目覚めない眠りについているとは思えない。 「大丈夫なのかよ……」 心配になって様子を見に来たリンをちらりと見やり、ハクは頷きを返した。 「この術をかけた精霊は高い位の術者ではないらしい。 解くのはそう難しい事ではない………が」 たっぷりと間をとった後に「が」という言葉をつけられ、リンの表情が険しくなる。 「……何だよ、「が」って」 ハクはリンから千尋へと視線を戻した。 ……もしもその夢が彼女にとって「居心地が良い処」で「帰りたくない」と思ったら……彼女を目覚めさせるのは困難になる」 「そんな事、あるはずない!」 坊の声が妙に大きく響いて聞こえ、リンが驚いたように肩を揺らす。 理想や願望を色濃く映し出す事もある。 そういう世界に永遠に浸っていられるならばその方が良いと考えてしまう事も、あり得るのではないか? 絶対に違う、とハクには言い切れなかった。 ゆっくりと意識が下りていく。 他人の意識のなかに入り込むことにためらいを感じた事はない。 だが彼女が自分をどう思っているのか、という事が見えるのは、何となく恐い気がした。 (あれは……) 目の前に景色が見えてくる。 何処かで見た事があると思っていたハクは、その景色が鮮明になるにつれてその景色が何であるのかを理解して声を漏らした。 「……湯屋、か……」 目の前に広がる景色は湯屋の景色。 彼女は湯屋の夢を見ているのだ。 夢とはいえども彼女の意識のなかでは現実と大して変わりない。 地面に降り立ち特に異常ない事を確認してからハクは湯屋へと向かって歩き出した。 まずは夢のなかの千尋と会わなければならない。 そんな事を思いながら橋を渡ろうとしたハクは、向こうから歩いてくる人影に気がついて柱に身を隠した。 (あれは……!) 向こうから歩いてくる人影は子供。 黒髪を切りそろえ、白い水干に身を包んだ少年の姿だ。 子供の姿をしたハクは、柱の影にいるハクには気がつくことなく歩いていく。 その後ろ姿を見送り、ハクは改めて湯屋を見上げた。 彼女が湯屋にやって来た頃の記憶だ。 (一体どんな夢を見ているのだろう) 目の前にそびえ立つ湯屋は、ハクの記憶のなかと寸分違わぬ姿を保っていた。 皆寝静まっている時間帯らしく、湯屋は静まりかえっている。 ハクは湯屋の下層へと向かって歩いていた。 (きっと千尋はあそこにいる) そんな確信があった。 小さな潜り戸をそっと開ける。 「……えっ?」 そこには大きな釜と、沢山の薬草が収められた棚があって。 そして。 「……あなた、誰…?」 今は懐かしい幼い子供の姿をした千尋が、ススワタリ達と驚いた様子でハクを見つめていた。 (記憶も子供の頃に戻っているのか) 幼い子供の記憶が前に出ているのならば、「彼女」が知るハクの姿も子供の姿。 今の大人の姿をしたハクは見知らぬ者でしかない。 だからハクは微笑みを浮かべてじっと千尋を見つめた。 「こんな処にいたのか、千尋」 「私の名前、知ってるの……?」 不思議そうな表情をしている千尋は、今も昔も変わらない。 「知っている。 今のそなたも、本来あるべき姿のそなたも」 「あるべき姿……?」 「そう」 ゆっくりと怖がらせないように歩みよる。 最初は警戒しているそぶりを見せていた千尋だったが、ハクが近づいても逃げようとはしなかった。 それなりの時を生きているハクではあったが、こういうケースは初めてで自信はなかった。 だから、これは賭に近かった。 もし彼女が拒絶すれば、夢は迷路になる。 「……ハク…?」 おそるおそる……といった様子で訊ねて来た千尋に、ハクは頷いてみせた。 「そうだよ。 千尋ももう子供じゃない……大人になりつつあるんだ」 「そう……そうだよ、ね。 私、湯屋に来てもう随分経つんだよね……」 千尋の姿が、子供から少しずつ成長していく。 それにつれて千尋の記憶も蘇ってきているようだった。 「帰らなきゃ……私、仕事の途中だったよね……?」 「そうだね。 早く戻らなければ皆が心配する」 千尋に向けて手をさしのべる。 「うん」 その手に千尋の手が重なった。 「千!!」 見下ろしてくる坊やリンの顔を、千尋は目をぱちぱちと忙しなく瞬きさせながら見つめた。 「気分悪くないか? 大丈夫か?」 矢継ぎ早に問いかけられても良く分からない。 「え……えっと?」 (私、今までボイラー室にいたんじゃ……?) 「夢を見ていたんだよ」 やわらかな声に誘われるように視線を向けると。 たった今傍にいたはずのハクが、やわらかな笑みを浮かべて千尋を見つめていた。 「夢……?」 「そう、夢」 そっか、夢か……と納得し、千尋は改めてどんな夢を見ていたのかを思いだそうと意識を奥へ集中させた。 「……あれ?」 「どうしたんだよ」 素っ頓狂な声をあげた千尋に、リンが心配そうに声をかける。 「……どんな夢見てたのかな〜って改めて考えたら……思い出せないの」 「夢だからな……目覚めた途端に忘れちまったんだろ」 「でも……」 さっきまで覚えていたのに。 ハクに視線を向けるが、彼は何も言わずただ微笑みを浮かべているだけだった。 術にかかった事はそれなりに千尋の体に負担をかけていたらしく、暫く話をした後千尋は「もうちょっと寝る」と言って再び眠ってしまった。 今度のは魔力の片鱗は感じられない普通の眠り。 体力が回復すれば自然に目覚めるだろう。 邪魔しないようにと部屋の外へ出たハク、坊、リンの3人だったが。 「とりあえず千が無事なら良しとするわ。 オレは部屋に戻るぜ」 「千が起きたらまた来るから」 リンと坊はそう言って自分の部屋へと戻っていった。 後にはハクが残されるばかり。 ハクには気になっている事があった。 確かにあの出来事があったからこそハクと千尋は再会出来たのだが、どちらかといえば楽しい事よりも辛い事の方が多く残ったはずのあの頃を、どうして夢に見るのか。 辛すぎて記憶に強く残ったのかとも思ったが、その割には夢のなかの空気はとてもやわらかくて、千尋のなかでは「幸せな記憶」として残っている事は容易に想像出来る。 それは今を幸せと感じているという証拠にもなる。 「幸せ……か」 長い時を生きるハクにとって「幸せ」とはあまりピンと来ないニュアンスの言葉だったが、今なら理解出来る。 千尋の記憶のなかで感じたあの感覚が幸せという想い。 それは自分も千尋に対して感じている感覚だった。 END 素材:.

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