あつ森 たきじま。 Old Tweets: anbeyou (あんべよう)

泉鏡花 歌行燈

あつ森 たきじま

【材料(3〜4人分)】 ・鶏肉スライス 250g ・新ジャガ 2個(500g) ・ピーマン 2個 ・塩 少々 ・サラダ油 大さじ1/2 ・A[しょうゆ大さじ2 みりん大さじ2 粒マスタード大さじ1/2] 【つくり方】 (1) ジャガイモは皮ごとよく洗い、ラップで包む。 600Wのレンジで3分加熱し、上下を返してさらに3分加熱する。 竹串や箸がすっと刺さればOK。 硬ければさらに加熱する。 (2) Aを混ぜておく。 (3) ピーマンは縦半分に切って、種を除いて、7〜8mm幅に切る。 (4) ジャガイモの粗熱が取れたら、8等分に切り分ける。 (5) 26cm程度のフライパンに油を入れて中火にかけ、鶏肉を入れて塩を振って炒める。 (6) 鶏肉の色が変わったら、鶏肉を奥に寄せる。 (7) あいたところに、ジャガイモを入れて鶏の脂をからめる。 <ポイント> ジャガイモと脂は相性抜群。 鶏肉の脂をたっぷり吸わせましょう。 (8) なじんだらAとピーマンを加えて炒め合わせる。 (9) 汁気が少なくなったら器に盛る。 <ポイント> 余ったら水とカレールーを加えるだけで、チキンカレーに変身します。 【材料(3〜4人分)】 ・新タマネギ 300g(大1個) ・シメジ 1/2パック(50g) ・卵 2個 ・塩昆布 適量 ・オリーブオイル 大さじ1 ・A[水800ml 塩小さじ1/2] ・B[塩小さじ1/4 コショウ少々] 【つくり方】 (1) タマネギは皮をむき、8等分のくし型に切る。 シメジはいしづきを落として粗くほぐす。 (2) 鍋にタマネギとシメジとA(水・塩)を入れて中火にかける。 (3) 煮立ったらフタをして、弱火で7〜8分ほど煮る。 (4) 卵を溶きほぐしておく。 (5) 鍋のフタを取り、B(塩・コショウ)で味を調える。 (6) 器に具材を取り分ける。 (7) 残った煮汁を一度煮立て、溶き卵を一気に流し入れる。 (8) 卵がふわっと浮いてきたら、箸で優しくかき混ぜ、固まったら火を止める。 <ポイント> 卵は軽くかき混ぜて固めるだけ。 食べごたえのある具材に変身! (9) 器に、卵と煮汁を入れ、塩昆布をのせ、オリーブオイルをかける。 【材料(つくりやすい分量)】 ・鶏肉スライス 250g ・細ネギ小口切り 3本 ・白いりゴマ 大さじ1/2 ・ゴマ油 適量 ・新タマネギ 300g(大1個) ・梅干しの果肉 1個分(or梅肉大さじ1) ・A[しょうゆ大さじ1と1/2 砂糖大さじ1 おろしショウガ大さじ1/2 ゴマ油大さじ1/2] ・B[酢大さじ1 オリーブオイル大さじ1/2 はちみつ大さじ1/2 塩少々(減塩梅干しを使う場合は多めに入れる)] 【つくり方】 (1) 袋に鶏肉を入れて、Aを加えてもみ込み、空気を抜いて冷蔵庫で2時間以上置く(冷蔵庫で3日保存可能)。 (2) タマネギは縦半分に切ってから、繊維と平行にごく薄切りにする。 梅干しは果肉をたたいて梅肉ペーストにする。 別の袋に梅肉(と梅干しのタネ)とBを加え、タマネギをいれて混ぜ、空気を抜いて2時間以上置く(冷蔵庫で3日保存可能)。 (3) 鶏肉を炒める。 フライパンに油を入れて中火にかけ、鶏肉を炒める。 (4) 器に盛ってねぎとゴマをのせ、タマネギマリネを添える。 【Live News it!】 毎週月〜金曜日 午後4:50〜7:00、フジテレビおよびFNN系列各局で放送中 最新情報は公式サイト へ 【番組で紹介した食材】 オンライン通販が可能です。

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あつ森 たきじま

その燃立つようなのに、朱で 処々 ( ところどころ )ぼかしの入った 長襦袢 ( ながじゅばん )で。 女は 裙 ( すそ )を 端折 ( はしょ )っていたのではない。 褄 ( つま )を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、 紅 ( くれない )がしっとり垂れて、白い足くびを 絡 ( まと )ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。 素足に染まって、その 紅 ( あか )いのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい 駒下駄 ( こまげた )、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、 股 ( また )を一つ 捩 ( よじ )った姿で、 降 ( ふり )しきる雨の待合所の片隅に、腰を掛けていたのである。 日永 ( ひなが )の頃ゆえ、まだ 暮 ( くれ )かかるまでもないが、やがて五時も過ぎた。 場所は院線電車の 万世橋 ( まんせいばし )の停車 場 ( じょう )の、あの高い待合所であった。 柳はほんのりと 萌 ( も )え、花はふっくりと 莟 ( つぼ )んだ、昨日今日、緑、 紅 ( くれない )、霞の紫、春のまさに 闌 ( たけなわ )ならんとする気を 籠 ( こ )めて、色の濃く、力の強いほど、 五月雨 ( さみだれ )か何ぞのような雨の 灰汁 ( あく )に包まれては、景色も人も、神田川の小舟さえ、皆黒い中に、紅梅とも、緋桃とも言うまい、横しぶきに、血の滴るごとき 紅木瓜 ( べにぼけ )の、濡れつつぱっと咲いた風情は、見向うものの、 面 ( おもて )のほてるばかり目覚しい。 …… この目覚しいのを見て、話の主人公となったのは、大学病院の内科に勤むる、学問と、手腕を世に知らるる、最近留学して帰朝した 秦宗吉 ( はたそうきち )氏である。 辺幅 ( へんぷく )を修めない、質素な人の、 住居 ( すまい )が芝の 高輪 ( たかなわ )にあるので、毎日病院へ通うのに、この院線を使って、お茶の水で下車して、あれから大学の所在地まで徒歩するのが 習 ( ならい )であったが、五日も七日もこう降り続くと、どこの道もまるで泥海のようであるから、 勤人 ( つとめにん )が大路の 往還 ( ゆきき )の、茶なり黒なり背広で靴は、まったく 大袈裟 ( おおげさ )だけれど、狸が土舟という 体 ( てい )がある。 ……これだと、ちょっと 歩行 ( ある )いただけで甲武線は東京の大中央を突抜けて、一息に品川へ…… が、それは段取だけの事サ、時間が時間だし、雨は降る……ここも 出入 ( ではいり )がさぞ籠むだろう、と思ったより 夥 ( おびただ )しい混雑で、ただ停車場などと、宿場がって 済 ( すま )してはおられぬ。 川留 ( かわどめ )か、火事のように 湧立 ( わきた )ち 揉合 ( もみあ )う群集の黒山。 中野行を待つ右側も、品川の左側も、二重三重に人垣を造って、線路の上まで 押覆 ( おっかぶ )さる。 すぐに電車が来た処で、どうせ一度では乗れはしまい。 たしか、中央の台に、まだ 大 ( おおき )な箱火鉢が出ていた……そこで、ハタと 打撞 ( ぶつか )ったその縮緬の炎から、急に瞳を 傍 ( わき )へ 外 ( そ )らして、横ざまにプラットフォームへ出ようとすると、戸口の柱に、ポンと出た、も一つ赤いもの。 二 威 ( おどか )しては 不可 ( いけな )い。 何、黒山の中の赤帽で、そこに腕組をしつつ、うしろ向きに 凭掛 ( もたれかか )っていたが、宗吉が顔を出したのを、茶色のちょんぼり 髯 ( ひげ )を 生 ( はや )した小白い横顔で、じろりと 撓 ( た )めると、 「上りは停電……下りは故障です。 」 と、人の顔さえ見れば、返事はこう言うものと 極 ( き )めたようにほとんど機械的に言った。 そして 頸窪 ( ぼんのくぼ )をその凭掛った柱で小突いて、超然とした。 「へッ! 上りは停電。 」 「下りは故障だ。 」 響 ( ひびき )の応ずるがごとく、四五人口々に 饒舌 ( しゃべ )った。 「ああ、ああ、」 「 堪 ( たま )らねえなあ。 」 「よく出来てら。 」 「困ったわねえ。 」と、つい釣込まれたかして、 連 ( つれ )もない女学生が 猪首 ( いくび )を縮めて 呟 ( つぶや )いた。 が、いずれも、今はじめて知ったのでは無さそうで、赤帽がしかく機械的に言うのでも分る。 かかる群集の 動揺 ( どよ )む下に、冷然たる線路は、日脚に薄暗く沈んで、いまに 鯊 ( はぜ )が釣れるから待て、と大都市の泥海に、入江のごとく 彎曲 ( わんきょく )しつつ、 伸々 ( のびのび )と静まり返って、その癖 底光 ( そこびかり )のする歯の土手を見せて、 冷笑 ( あざわら )う。 赤帽の言葉を善意に解するにつけても、いやしくも中 山高帽 ( やまたか )を 冠 ( かぶ )って、外套も服も身に添った、洋行がえりの大学教授が、 端近 ( はしぢか )へ押出して、その際じたばたすべきではあるまい。 緋鯉 ( ひごい )が躍ったようである。 思わず視線の向うのと、肩を合せて、その時、腰掛を立上った、もう一人の女がある。 ちょうど緋縮緬のと並んでいた、そのつれかとも思われる、大島の羽織を着た、 丸髷 ( まるまげ )の、脊の高い、面長な、目鼻立のきっぱりした顔を見ると、宗吉は、あっと思った。 再び、おや、と思った。 と言うのは、このごろ忙しさに、 不沙汰 ( ぶさた )はしているが、 知己 ( ちかづき )も知己、しかもその婚礼の席に 列 ( つらな )った、 従弟 ( いとこ )の細君にそっくりで。 世馴 ( よな )れた人間だと、すぐに、「おお。 」と声を掛けるほど、よく似ている。 がその似ているのを驚いたのでもなければ、思い掛けず出会ったのを驚いたのでもない。 まさしくその人と思うのが、 近々 ( ちかぢか )と顔を会わせながら、すっと外らして窓から雨の空を 視 ( み )た、取っても附けない、赤の他人らしい処置 振 ( ぶり )に、一驚を 吃 ( きっ )したのである。 いや、全く他人に違いない。 けれども、 脊恰好 ( せいかっこう )から、 形容 ( なりかたち )、 生際 ( はえぎわ )の少し乱れた処、色白な 容色 ( きりょう )よしで、 浅葱 ( あさぎ )の 手柄 ( てがら )が、いかにも似合う細君だが、この女もまた不思議に浅葱の手柄で。 鬢 ( びん )の色っぽい処から……それそれ、少し 仰向 ( あおむ )いている顔つき。 他人が、ちょっと眉を 顰 ( ひそ )める 工合 ( ぐあい )を、その細君は小鼻から口元に 皺 ( しわ )を寄せる癖がある。 ……それまでが、そのままで、電車を 待草臥 ( まちくたび )れて、雨に 侘 ( わび )しげな様子が、小鼻に寄せた皺に 明白 ( あからさま )であった。 勿論、別人とは納得しながら、うっかり口に出そうな 挨拶 ( こんにちは )を、唇で 噛留 ( かみと )めて、心着くと、いつの間にか、足もやや近づいて、帽子に手を掛けていた 極 ( きまり )の悪さに、背を向けて立直ると、雲低く、 下谷 ( したや )、神田の屋根一面、雨も霞も 漲 ( みなぎ )って濁った 裡 ( なか )に、神田明神の森が見える。 と、緋縮緬の女が、同じ方を 凝 ( じっ )と 視 ( み )ていた。 三 鼻の 隆 ( たか )いその顔が、ひたひたと横に寄って、胸に 白粉 ( おしろい )の着くように思った。 宗吉は、 愕然 ( がくぜん )とするまで、再び、似た人の面影をその女に 発見 ( みいだ )したのである。 緋縮緬の女は、 櫛巻 ( くしまき )に結って、黒縮緬の 紋着 ( もんつき )の羽織を 撫肩 ( なでがた )にぞろりと着て、 痩 ( や )せた片手を、力のない襟に挿して、そうやって、引上げた 褄 ( つま )を 圧 ( おさ )えるように、膝に置いた手に 萌黄色 ( もえぎいろ )のオペラバッグを大事そうに持っている。 はきものも、 襦袢 ( じゅばん )も、素足も、櫛巻も、紋着も、何となくちぐはぐな処へ、色白そうなのが濃い化粧、口の大きく見えるまで 濡々 ( ぬれぬれ )と 紅 ( べに )をさして、細い 頸 ( えり )の、真白な 咽喉 ( のど )を長く、明神の森の遠見に、伸上るような、ぐっと仰向いて、大きな目を 凝 ( じっ )と ( みは )った顔は、首だけ 活人形 ( いきにんぎょう )を 継 ( つ )いだようで、 綺麗 ( きれい )なよりは、もの 凄 ( すご )い。 ただ、美しく優しく、しかもきりりとしたのは 類 ( たぐい )なきその眉である。 眉は、宗吉の思う、忘れぬ女と寸分違わぬ。 が、この似たのは、もう一人の丸髷の方が、従弟の細君に似たほど、 適格 ( しっくり )したものでは決してない。 あるいはそれが余りよく似たのに引込まれて、心に刻んだ面影が緋縮緬の方に宿ったのであろうも知れぬ。 よし、眉の姿ただ一枚でも、秦宗吉の胸は、夢に三日月を呑んだように、きらりと尊く輝いて、時めいて躍ったのである。 「ああ……もう 一呼吸 ( ひといき )で、 剃刀 ( かみそり )で、……」 と、今 視 ( なが )めても身の毛が 悚立 ( よだ )つ。 ……森のめぐりの雨雲は、陰惨な鼠色の 隈 ( くま )を取った 可恐 ( おそろし )い面のようで、家々の棟は、瓦の 牙 ( きば )を噛み、歯を重ねた、その上に 二処 ( ふたところ )、 三処 ( みところ )、 赤煉瓦 ( あかれんが )の軒と、 亜鉛 ( トタン )屋根の 引剥 ( ひっぺがし )が、高い空に、 赫 ( かっ )と赤い歯茎を 剥 ( む )いた、人を 啖 ( く )う鬼の口に 髣髴 ( ほうふつ )する。 ……その森、その 樹立 ( こだち )は、……春雨の 煙 ( けぶ )るとばかり見る目には、三ツ五ツ縦に並べた薄紫の 眉刷毛 ( まゆばけ )であろう。 死のうとした身の、その時を思えば、それも 逆 ( さかしま )に生えた 蓬々 ( おどろおどろ )の 髯 ( ひげ )である。 その空へ、すらすらと 雁 ( かりがね )のように浮く、緋縮緬の女の眉よ! 瞳も 据 ( すわ )って、 瞬 ( まばた )きもしないで、 恍惚 ( うっとり )と同じ処を 凝視 ( みつ )めているのを、宗吉はまたちらりと見た。 ああその女? と波を打って 轟 ( とどろ )く胸に、この停車場は、 大 ( おおい )なる船の甲板の廻るように、 舳 ( みよし )を明神の森に向けた。 手に取るばかりなお近い。 「なぞえに低くなった、あそこが明神坂だな。 」 その右側の露路の突当りの家で。 ……その 夜 ( よ )、明神の境内で、アワヤ 咽喉 ( のんど )に擬したのはその剃刀であるが。 (ちょっと順序を 附 ( つけ )よう。 ) 宗吉は学資もなしに、無鉄砲に国を出て、 行処 ( ゆきどころ )のなさに、その頃、ある一団の、取留めのない不体裁なその日ぐらしの人たちの世話になって、辛うじて 雨露 ( うろ )を 凌 ( しの )いでいた。 その人たちというのは、主に 懶惰 ( らんだ )、 放蕩 ( ほうとう )のため、世に見棄てられた医学生の落第なかまで、年輩も相応、 女房持 ( にょうぼうもち )なども 交 ( まじ )った。 中には政治家の半端もあるし、実業家の下積、山師も居たし、 真面目 ( まじめ )に巡査になろうかというのもあった。 そこで、宗吉が当時寝泊りをしていたのは、同じ明神坂の片側長屋の一軒で、ここには食うや食わずの医学生あがりの、松田と云うのが夫婦で居た。 その突当りの、柳の樹に、軒燈の掛った 見晴 ( みはらし )のいい誰かの 妾宅 ( しょうたく )の貸間に居た、露の垂れそうな綺麗なのが……ここに緋縮緬の女が似たと思う、そのお千さんである。 四 お千は、世を忍び、人目を 憚 ( はばか )る女であった。 宗吉が世話になる、 渠等 ( かれら )なかまの、ほとんど首領とも言うべき、熊沢という、 追 ( おっ )て大実業家となると聞いた、絵に描いた 化地蔵 ( ばけじぞう )のような 大漢 ( おおおとこ )が、そんじょその辺のを 落籍 ( ひか )したとは 表向 ( おもてむき )、得心させて、連出して、内証で囲っていたのであるから。 ……ここは、ひもじい経験のない読者にも御推読を願っておく。 が、いつになってもその朝の御飯はなかった。 妾宅では、前の晩、宵に一度、てんどんのお 誂 ( あつら )え、夜中一時頃に 蕎麦 ( そば )の出前が、 芬 ( ぷん )と 枕頭 ( まくらもと )を匂って露路を入ったことを知っているので、 行 ( ゆ )けば何かあるだろう……天気が 可 ( い )いとなお食べたい。 空腹 ( すきばら )を抱いて、げっそりと落込むように、 溝 ( みぞ )の減った裏長屋の格子戸を開けた処へ、突当りの妾宅の柳の下から、ぞろぞろと 長閑 ( のどか )そうに三人出た。 肩幅の広いのが、薄汚れた黄八丈の書生羽織を、ぞろりと着たのは、この長屋の 主人 ( あるじ )で。 一度戸口へ 引込 ( ひっこ )んだ宗吉を横目で見ると、小指を出して、 「どうした。 」 と小声で言った。 「まだ、お 寝 ( よ )ってです。 」 起きるのに張合がなくて、細君の、まだ 裸体 ( はだか )で 柏餅 ( かしわもち )に 包 ( くる )まっているのを、そう言うと、主人はちょっと舌を出して黙って 行 ( ゆ )く。 次のは、 剃 ( そ )りたての頭の青々とした綺麗な出家。 昨夜 ( ゆうべ )、この露路に入った時は、紫の 輪袈裟 ( わげさ )を雲のごとく尊く 絡 ( まと )って、水晶の 数珠 ( じゅず )を提げたのに。 ……小皿の平四郎。 いずれも、 花骨牌 ( はちはち )で徹夜の今、明神坂の 常盤湯 ( ときわゆ )へ行ったのである。 行違いに、ぼんやりと、宗吉が妾宅へ入ると、食う物どころか、いきなり跡始末の掃除をさせられた。 「済まないことね、学生さんに働かしちゃあ。 」 とお千さんは、伊達巻一つの 艶 ( えん )な 蹴出 ( けだ )しで、お召の 重衣 ( かさね )の 裙 ( すそ )をぞろりと引いて、 黒天鵝絨 ( くろびろうど )の 座蒲団 ( ざぶとん )を持って、火鉢の前を 遁 ( に )げながらそう言った。 「何、目下は 私 ( あっし )たちの小僧です。 」 と、 甘谷 ( あまや )という 横肥 ( よこぶと )り、でぶでぶと脊の低い、ばらりと髪を長くした、太鼓腹に角帯を巻いて、 前掛 ( まえかけ )の 真田 ( さなだ )をちょきんと結んだ、これも医学の落第生。 追って大実業家たらんとする準備中のが、笑いながら言ったのである。 」 と、調子づいて、 「さあ、 貴女 ( あなた )。 」 と、甘谷が座蒲団を 引攫 ( ひっさら )って、もとの処へ。 …… 身体 ( からだ )に似ない腰の軽い男。 このくらいな事は当然で。 対 ( つい )の蒲団を、とんとんと小形の長火鉢の内側へ直して、 「さ、さ、貴女。 」 と自分は 退 ( の )いて、 「いざまず……これへ。 」と口も気もともに軽い、が、 起居 ( たちい )が 石臼 ( いしうす )を 引摺 ( ひきず )るように、どしどしする。 夜あかしはしても、朝湯には行けないのである。 「 可厭 ( いや )ですことねえ。 」 と、婀娜な目で、 襖際 ( ふすまぎわ )から 覗 ( のぞ )くように、友染の 裾 ( すそ )を 曳 ( ひ )いた櫛巻の立姿。 五 桜にはちと早い、 木瓜 ( ぼけ )か、何やら、枝ながら障子に映る花の影に、ほんのりと 日南 ( ひなた )の 薫 ( かおり )が添って、お千がもとの座に着いた。 向うには、旦那の熊沢が、上下大島の金鎖、あの大々したので、ドカリと 胡坐 ( あぐら )を組むのであろう。 「お留守ですか。 」 宗吉が何となく甘谷に言った。 ここにも見えず、湯に行った中にも居なかった。 その熊沢を 訊 ( き )いたのである。 縁側の片隅で、 「えへん!」と屋鳴りのするような 咳払 ( せきばらい )を響かせた、便所の 裡 ( なか )で。 「熊沢はここに 居 ( お )るぞう。 」 「まあ。 」 「随分ですこと、ほほほ。 」 と 家主 ( いえぬし )のお妾が、次の 室 ( ま )を台所へ 通 ( とおり )がかりに笑って 行 ( ゆ )くと、お千さんが 俯向 ( うつむ )いて、 莞爾 ( にっこり )して、 「 余 ( あんま )り色気がなさ過ぎるわ。 」 「そこが御婦人の毒でげす。 」 と甘谷は前掛をポンポンと 敲 ( たた )いて、 「お千さんは大将のあすこン処へ落ッこちたんだ。 」 「あら、随分…… 酷 ( ひど )いじゃありませんか、甘谷さん、 余 ( あんま )りだよ。 」 何にも知らない宗吉にも、この間違は直ぐ分った、汚いに相違ない。 「いやあ、これは、失敗、失敬、失礼。 」 甘谷は立続けに 叩頭 ( おじぎ )をして、 「そこで、おわびに、一つ貴女の顔を 剃 ( あた )らして頂きやしょう。 いえ、自慢じゃありませんがね、 昨夜 ( ゆうべ )ッから申す通り、野郎 図体 ( ずうたい )は不器用でも、 勝奴 ( かつやっこ )ぐらいにゃ 確 ( たしか )に使えます。 剃刀 ( かみそり )を持たしちゃ 確 ( たしか )です。 」 宗吉は、お千さんの、湯にだけは 密 ( そっ )と行っても、床屋へは 行 ( ゆ )けもせず、呼ぶのも慎むべき境遇を 頷 ( うなず )きながら、お妾に剃刀を借りて戻る。 …… 「おっと!……ついでに 金盥 ( かなだらい )……気を利かして、気を利かして。 」 この間に、いま何か話があったと見える。 「さあ、君、ここへ顔を出したり、一つ手際を御覧に入れないじゃ、奥さん御信用下さらない。 」 「いいえ、そうじゃありませんけれどもね、私まだ、そんなでもないんですから。 」 「何、御遠慮にゃあ及びません。 間違った処でたかが小僧の顔でさ。 ……ちょうど、ほら、むく毛が生えて、 子 ( あんこ )の 撮食 ( つまみぐい )をしたようだ。 」 宗吉は、 可憐 ( あわれ )やゴクリと 唾 ( つ )を呑んだ。 「仰向いて、ぐっと。 そら、どうです、つるつるのつるつると、鮮かなもんでげしょう。 」 「何だか 危 ( あぶな )ッかしいわね。 」 と少し膝を浮かしながら、手元を覗いて 憂慮 ( きづかわ )しそうに、動かす顔が、鉄瓶の湯気の 陽炎 ( かげろう )に薄絹を掛けつつ、宗吉の目に、ちらちら、ちらちら。 「大丈夫、それこの通り、ちょいちょいの、ちょいちょいと、」 「あれ、 止 ( よ )して頂戴、止してよ。 」 と浮かした膝を揺ら揺らと、袖が薫って伸上る。 「なぜですてば。 」 「危いわ、危いわ。 おとなしい、その優しい 眉毛 ( まみえ )を、落したらどうしましょう。 」 「その事ですかい。 」 と、ちょっと留めた剃刀をまた当てた。 「構やしません。 」 「あれ、目の縁はまだしもよ、上は止して、後生だから。 」 「貴女の襟脚を 剃 ( す )ろうてんだ。 何、こんなものぐらい。 」 「ああ、ああああ、ああーッ。 」 と便所の 裡 ( なか )で屋根へ投げた、筒抜けな 大欠伸 ( おおあくび )。 「笑っちゃあ…… 不可 ( いけな )い不可い。 」 「ははははは、笑ったって泣いたって、何、こんな小僧ッ子の 眉毛 ( まゆげ )なんか。 」 「 厭 ( いや )、厭、厭。 」 と 支膝 ( つきひざ )のまま、するすると寄る 衣摺 ( きぬずれ )が、遠くから羽衣の音の 近 ( ちかづ )くように宗吉の胸に響いた……畳の波に人魚の半身。 「どんな 母 ( おっか )さんでしょう、このお方。 」 雪を欺く 腕 ( かいな )を空に、甘谷の剃刀の手を支え、突いて離して、胸へ、抱くようにして 熟 ( じっ )と 視 ( み )た。 「 羨 ( うらやま )しい事、まあ、何て、いい 眉毛 ( まみえ )だろう。 親御はさぞ、お可愛いだろうねえ。 」 乳も白々と、優しさと 可懐 ( なつか )しさが透通るように 視 ( み )えながら、 衣 ( きぬ )の 綾 ( あや )も 衣紋 ( えもん )の色も、黒髪も、宗吉の目の 真暗 ( まっくら )になった時、肩に袖をば掛けられて、 面 ( おもて )を襟に伏せながら、忍び兼ねた胸を絞って、思わず、ほろほろと熱い涙。 お妾が次の 室 ( ま )から、 「切れますか剃刀は……あわせに 遣 ( や )ろう遣ろうと思いましちゃあ……ついね……」 自殺をするのに、宗吉は、床屋に持って 行 ( ゆ )きましょう、と言って、この剃刀を取って出た。 それは同じ日の 夜 ( よ )に 入 ( い )ってからである。 仔細 ( しさい )は…… 六 ……さて、やがて朝湯から三人が戻って来ると、長いこと便所に居た熊沢も一座で、また花札を 弄 ( もてあそ )ぶ事になって、朝飯は 鮨 ( すし )にして、湯豆腐でちょっと一杯、と言う。 で、宗吉がこれを買いに遣られたのが事の 原因 ( おこり )であった。 何分にも、十六七の 食盛 ( くいざか )りが、毎日々々、三度の食事にがつがつしていた処へ、朝飯前とたとえにも言うのが、突落されるように 嶮 ( けわ )しい石段を下りたドン底の 空腹 ( ひもじ )さ。 …… 天麩羅 ( てんぷら )とも、 蕎麦 ( そば )とも、焼芋とも、 芬 ( ぷん )と塩煎餅の 香 ( こうば )しさがコンガリと鼻を突いて、袋を持った手がガチガチと震う。 近飢 ( ちかがつ )えに、冷い汗が 垂々 ( たらたら )と身うちに流れる堪え難さ。 その時分の物価で、……忘れもしない七銭が煎餅の可なり 嵩 ( かさ )のある中から……小判のごとく、数二枚。 宗吉は、 一坂 ( ひとさか )戻って、段々にちょっと 区劃 ( くぎり )のある、すぐに手を立てたように石坂がまた急になる、平面な処で、 銀杏 ( いちょう )の葉はまだ浅し、 樅 ( もみ )、 榎 ( えのき )の 梢 ( こずえ )は遠し、 楯 ( たて )に取るべき蔭もなしに、 崕 ( がけ )の 溝端 ( どぶばた )に 真俯向 ( まうつむ )けになって、生れてはじめて、許されない禁断の 果 ( このみ )を、相馬の名に負う、轡をガリリと頬張る思いで、馬の口にかぶりついた。 が、 甘 ( うま )さと切なさと恥かしさに、堅くなった胸は、 自 ( おのず )から 溝 ( どぶ )の上へのめって、折れて、煎餅は口よりもかえって胃の中でボリボリと 破 ( わ )れた。 ト 突出 ( つきだし )た 廂 ( ひさし )に額を打たれ、 忍返 ( しのびがえし )の釘に眼を刺され、 赫 ( かっ )と血とともに 総身 ( そうしん )が熱く、たちまち、罪ある蛇になって、 攀上 ( よじのぼ )る石段は、お七が火の見を駆上った思いがして、 頭 ( こうべ )に 映 ( さ )す太陽は、血の色して段に流れた。 宗吉はかくてまた明神の 御手洗 ( みたらし )に、更に、氷に 閑 ( とじ )らるる思いして、 悚然 ( ぞっ )と寒気を感じたのである。 「くすくす、くすくす。 」 花骨牌 ( はちはち )の車座の、輪に身を 捲 ( ま )かるる、 危 ( あやう )さを感じながら、宗吉が我知らず 面 ( おもて )を赤めて、煎餅の袋を渡したのは、甘谷の手で。 「おっと来た、めしあがれ。 」 と一枚めくって合せながら、袋をお千さんの手に渡すと、これは少々疲れた風情で、なかまへは入らぬらしい。 火鉢を隔てたのが請取って、膝で 覗 ( のぞ )くようにして開けて、 「御馳走様ですね……早速お毒見。 」 と言った。 これにまた胸が痛んだ。 だけなら、まださほどまでの仔細はなかった。 「くすくす、くすくす。 」 宗吉がこの座敷へ入りしなに、もうその忍び笑いの声が耳に附いたのであるが、この時、お千さんの一枚 撮 ( つま )んだ煎餅を、見ないように、ちょっと 傍 ( わき )へかわした宗吉の顔に、横から 打撞 ( ぶつか )ったのは小皿の平四郎。 ……頬骨の張った菱形の 面 ( つら )に、 窪 ( くぼ )んだ目を細く、小鼻をしかめて、 「くすくす。 」 とまた遣った。 手にわるさに落ちたと見えて札は持たず、 鍍金 ( めっき )の 銀煙管 ( ぎんぎせる )を構えながら、めりやすの 股引 ( ももひき )を前はだけに、片膝を立てていたのが、その膝頭に頬骨をたたき着けるようにして、 「くすくすくす。 」 続けて忍び 笑 ( わらい )をしたのである。 立続 ( たてつ )けて、 「くッくッくッ。 」 七 「こっちは、びきを泣かせてやれか。 」 と黄八丈が 骨牌 ( ふだ )を 捲 ( めく )ると、黒縮緬の坊さんが、 紅 ( あか )い裏を 翻然 ( ひらり )と 翻 ( かえ )して、 「餓鬼め。 」 と投げた。 「うふ、うふ、うふ。 」と平四郎の忍び笑が、歯茎を 洩 ( も )れて声に出る。 「うふふ、うふふ、うふふふふふ。 」 「何じゃい。 」と片手に 猪口 ( ちょく )を取りながら、 黒天鵝絨 ( くろびろうど )の 蒲団 ( ふとん )の上に、萩、 菖蒲 ( あやめ )、桜、 牡丹 ( ぼたん )の合戦を、どろんとした目で見据えていた、 大島揃 ( おおしまぞろい )、 大胡坐 ( おおあぐら )の熊沢が、ぎょろりと平四郎を見向いて言うと、笑いの虫は 蕃椒 ( とうがらし )を食ったように、赤くなるまで 赫 ( かっ )と 競勢 ( きお )って、 「うはははは、うふふ、うふふ。 うふふ。 えッ、いや、あ、あ、チ、あははははは、はッはッはッはッ、テ、ウ、えッ、えッ、えッ、えへへ、うふふ、あはあはあは、あは、あはははははは、あはははは。 」 「馬鹿な。 」 と唇を 横舐 ( よこな )めずって、熊沢がぬっと突出した猪口に、酌をしようとして、 銅壺 ( どうこ )から抜きかけた 銚子 ( ちょうし )の手を留め、お千さんが、 「どうしたの。 」 「おほほ、や、お尋ねでは恐入るが、あはは、テ、えッ。 えへ、えへへ、う、う、ちえッ、 堪 ( たま )らない。 あッはッはッはッ。 」 「魔が 魅 ( さ )したようだ。 」 甘谷が 呆 ( あき )れて 呟 ( つぶや )く、……と 寂然 ( しん )となる。 寂寞 ( しん )となると、 笑 ( わらい )ばかりが、 「ちゃはははは、う、はは、うふ、へへ、ははは、えへへへへ、えッへ、へへ、あははは、うは、うは、うはは。 どッこい、ええ、チ、ちゃはは、エ、はははは、ははははは、うッ、うッ、えへッへッへッ。 」 と横のめりに平四郎、煙管の 雁首 ( がんくび )で 脾腹 ( ひばら )を 突 ( つつ )いて、 身悶 ( みもだ )えして、 「くッ、苦しい……うッ、うッ、うッふふふ、チ、うッ、うううう苦しい。 ああ、切ない、あはははは、あはッはッはッ、おお、コ、こいつは、あはは、ちゃはは、テ、チ、たッたッ堪らん。 ははは。 」 と込上げ 揉立 ( もみた )て、 真赤 ( まっか )になった、七 顛 ( てん )八 倒 ( とう )の 息継 ( いきつぎ )に、つぎ 冷 ( ざま )しの茶を取って、がぶりと遣ると、 「わッ。 」と 咽 ( む )せて、灰吹を 掴 ( つか )んだが間に合わず、火入の灰へぷッと吐くと、むらむらと灰かぐら。 「ああ、あの 児 ( こ )、障子を一枚開けていな。 」 と黒縮緬の袖で払って出家が言った。 宗吉は針の 筵 ( むしろ )を飛上るように、そのもう一枚、 肘懸窓 ( ひじかけまど )の障子を開けると、 颯 ( さっ )と出る灰の吹雪は、すッと 蒼空 ( あおぞら )に渡って、 遥 ( はるか )に品川の海に消えた。 が、蔵前の煙突も、十二階も、 睫毛 ( まつげ )に 一眸 ( ひとめ )の北の 方 ( かた )、目の下、 一雪崩 ( ひとなだれ )に 崕 ( がけ )になって、崕下の、ごみごみした屋根を隔てて、 日南 ( ひなた )の煎餅屋の小さな店が、油障子も覗かれる。 ト 斜 ( ななめ )に、がッくりと 窪 ( くぼ )んで暗い、崕と石垣の間の、遠く明神の裏の石段に続くのが、 大蜈蚣 ( おおむかで )のように 胸前 ( むなさき )に 畝 ( うね )って、突当りに 牙 ( きば )を 噛合 ( かみあ )うごとき、小さな黒塀の忍び 返 ( がえし )の下に、 溝 ( どぶ )から 這上 ( はいあが )った 蛆 ( うじ )の、醜い汚い筋をぶるぶると震わせながら、 麸 ( ふ )を 嘗 ( な )めるような形が、 歴然 ( ありあり )と、 自分 ( おの )が瞳に映った時、宗吉はもはや 蒼白 ( まっさお )になった。 ここから 認 ( み )られたに相違ない。 と思う平四郎は、 涎 ( よだれ )と一所に、濡らした膝を、 手巾 ( ハンケチ )で横撫でしつつ、 「ふ、ふ、ふ、ふ、ふ。 」…… 大歎息 ( おおためいき )とともに尻を 曳 ( ひ )いたなごりの 笑 ( わらい )が、更に、がらがらがらと雷の鳴返すごとく少年の耳を打つ!…… 「お 煎 ( せん )をめしあがれな。 」 目の下の崕が 切立 ( きった )てだったら、宗吉は、お千さんのその声とともに、 倒 ( さかしま )に落ちてその場で五体を 微塵 ( みじん )にしたろう。 産 ( うみ )の親を 可懐 ( なつか )しむまで、眉の 一片 ( ひとひら )を 庇 ( かば )ってくれた、その人ばかりに恥かしい。 …… 「ちょっと、 宅 ( うち )まで。 宗吉は、しかし、その長屋の前さえ、 遁隠 ( にげかく )れするように素通りして、明神の境内のあなたこなた、人目の 隙 ( すき )の隅々に立って、 飢 ( うえ )さえ忘れて、半日を泣いて泣きくらした。 ついでがございますから……」 宗吉はわざと格子戸をそれて、 蚯蚓 ( みみず )の這うように台所から、 密 ( そっ )と妾宅へおとずれて、家主の手から剃刀を取った。 間 ( ま )を隔てた座敷に、 艶 ( あで )やかな影が 気勢 ( けはい )に映って、香水の 薫 ( かおり )は、つとはしり 下 ( もと )にも薫った。 が、 寂寞 ( ひっそり )していた。 露路の長屋の赤い 燈 ( あかり )に、珍しく、大入道やら、五分刈やら、中にも小皿で 禿 ( かむろ )なる影法師が動いて、ひそひそと声の漏れるのが、目を忍び、 音 ( ね )を 憚 ( はばか )る出入りには、宗吉のために、むしろ 僥倖 ( さいわい )だったのである。 八 「何をするんですよ、何をするんですよ、お前さん、 串戯 ( じょうだん )ではありません。 「まあ! 可 ( よ )かった。 」 と、身を 捻 ( ね )じて、肩を抱きつつ、 社 ( やしろ )の方を片手拝みに、 「虫が知らしたんだわね。 いま、お前さんが台所で、剃刀を持って 行 ( ゆ )くって声が聞えたでしょう、ドキリとしたのよ。 ……秦さん秦さんと言ったけれど、もう居ないでしょう。 何だかね、こんな間違がありそうな気がしてならない、私。 私、でね、すぐに後から駆出したのさ。 でも、どこって 当 ( あて )はないんだもの、鳥居前のあすこの床屋で聞いてみたの。 まあね、……まるでお見えなさらないと言うじゃあないの。 しまった、と思ったわ。 半分夢中で、それでも私がここへ来たのは 神仏 ( かみほとけ )のお助けです。 秦さん、私が助けるんだと思っちゃあ 不可 ( いけな )い。 可 ( よ )うござんすか、 可 ( い )いかえ、 貴方 ( あなた )。 ……親御さんが影身に添っていなさるんですよ。 可 ( よう )ござんすか、分りましたか。 」 と 小児 ( こども )のように、柔い胸に、帯も 扱帯 ( しごき )もひったりと抱き締めて、 「御覧なさい、お月様が、あれ、 仏様 ( ののさん )が。 」 忘れはしない、半輪の五日の月が黒雲を下りるように、荘厳なる銀杏の枝に、梢さがりに 掛 ( かか )ったのが、 可懐 ( なつかし )い亡き母の乳房の輪線の面影した。 「まあ、これからという、……女にしても 蕾 ( つぼみ )のいま、どうして死のうなんてしたんですよ。 ……まあ、とにかく、内へ 行 ( ゆ )きましょう。 可 ( い )い 塩梅 ( あんばい )に誰も居ないから。 」 促して、急いで脱放しの駒下駄を 捜 ( さぐ )る時、 白脛 ( しらはぎ )に 緋 ( ひ )が散った。 お千も 慌 ( あわただ )しかったと見えて、宗吉の 穿物 ( はきもの )までは心着かず、 可恐 ( おそろ )しい処を 遁 ( に )げるばかりに、息せいて手を引いたのである。 魔を 除 ( よ )け、死神を払う 禁厭 ( まじない )であろう、明神の 御手洗 ( みたらし )の水を 掬 ( すく )って、 雫 ( しずく )ばかり宗吉の 頭髪 ( かみ )を濡らしたが、 「……息災、延命、息災延命、学問、学校、心願成就。 」 と 柄杓 ( ひしゃく )を重げに口にした。 「 動悸 ( どうき )を御覧なさいよ、私のさ。 」 その胸の 轟 ( とどろ )きは、今より先に知ったのである。 「秦さん、私は貴方を連れて、もうあすこへは戻らない。 ……この剃刀で、貴方を、そりたての今道心にして、一緒に寝ようと思ったのよ。 ……あの坊さんは、高野山とかの、 金高 ( かねだか )なお宝ものを売りに出て来ているんでしょう。 どことかの大金持だの、何省の大臣だのに売ってやると言って、だまして、熊沢が皆質に入れて使ってしまって、催促される、苦しまぎれに、不断、何だか私にね、坊さんが 厭味 ( いやみ )らしい目つきをするのを知っていて、まあ大それた 美人局 ( つつもたせ )だわね。 私が弱いもんだから、 身体 ( からだ )も度胸もずばぬけて強そうな、あの人をたよりにして、こんな 身裁 ( しだら )になったけれど、……そんな相談をされてからはね……その上に、この 眉毛 ( まみえ )を見てからは……」 と、お千は 密 ( そっ )と宗吉の肩を撫でた。 「つくづく、あんな人が 可厭 ( いや )になった。 貴方を抱いて、ちゃんと起きて、居直って、あいそづかしをきっぱり言って、夜中に直ぐに飛出して、 溜飲 ( りゅういん )を下げてやろうと思ったけれど……どんな 発機 ( はずみ )で、 自棄腹 ( やけばら )の、あの人たちの乱暴に、貴方に怪我でもさせた日にゃ、取返しがつかないから、といま胸に手を置いて、分別をしたんですよ。 さ、このままどこかへ 行 ( ゆ )きましょう。 私に任して安心なさいよ。 ……貴方もきっとあの人たちに二度とつき合っては 不可 ( いけ )ません。 」 裏崕 ( うらがけ )の石段を降りる時、宗吉は狼の峠を越して、花やかな都を見る気がした。 「ここ……そう……」 お千さんが 莞爾 ( にっこり )して、塩煎餅を買うのに、昼夜帯を 抽 ( ぬ )いたのが、安ものらしい、が、 萌黄 ( もえぎ )の 金入 ( かねいれ )。 「食べながら 歩行 ( あるき )ましょう。 」 「弱虫だね。 」 大通 ( おおどおり )へ抜ける暗がりで、甘く、且つ 香 ( かんば )しく、 皓歯 ( しらは )でこなしたのを、口移し…… 九 宗吉が夜学から、 徒士町 ( おかちまち )のとある裏の、空瓶屋と 襤褸屋 ( ぼろや )の間の、貧しい下宿屋へ帰ると、 引傾 ( ひきかし )いだ 濡縁 ( ぬれえん )づきの六畳から、男が一人 摺違 ( すれちが )いに出て 行 ( ゆ )くと、お千さんはパッと障子を開けた。 が、もう床が取ってある…… 枕元の火鉢に、はかり炭を継いで、目の破れた金網を 斜 ( はす )に載せて、お千さんが 懐紙 ( ふところがみ )であおぎながら、 豌豆餅 ( えんどうもち )を焼いてくれた。 そして熱いのを口で吹いて、嬉しそうな宗吉に、浦里の話をした。 お千は、それよりも美しく、雪はなけれど、ちらちらと散る花の、小庭の 湿地 ( しけち )の、石炭殻につもる 可哀 ( あわれ )さ、痛々しさ。 時次郎でない、 頬被 ( ほおかぶり )したのが、黒塀の外からヌッと覗く。 お千が 脛白 ( はぎしろ )く、はっと立って、障子をしめようとする目の前へ、トンと下りると、つかつかと縁側へ。 「あれ。 」 「おい、気の毒だがちょっと用事だ。 」 と袖から蛇の首のように 捕縄 ( とりなわ )をのぞかせた。 膝をなえたように 支 ( つ )きながら、お千は宗吉を 背後 ( うしろ )に囲って、 「……この人は……」 「いや、小僧に用はない。 すぐおいで。 」 「宗ちゃん、……朝の御飯はね、煮豆が買って 蓋 ( ふた )ものに、…… 紅生薑 ( べにしょうが )と……紙の 蔽 ( おおい )がしてありますよ。 」 風俗係は草履を片手に、もう入口の 襖 ( ふすま )を開けていた。 お千が 穿 ( はき )ものをさがすうちに、風俗係は、内から、戸の錠をあけたが、軒を出ると、ひたりと腰縄を打った。 細腰はふっと消えて、すぼめた肩が、くらがりの柳に浮く。 ……そのお千には、もう 疾 ( とう )に、羽織もなく、下着もなく、 膚 ( はだえ )ただ白く 縞 ( しま )の小袖の 萎 ( な )えたるのみ。 宗吉は、 跣足 ( はだし )で、めそめそ泣きながら後を追った。 目も心も 真暗 ( まっくら )で、町も処も覚えない。 颯 ( さっ )と一条の冷い風が、電燈の細い光に桜を誘った時である。 「旦那。 」 振向きもしないで、うなだれたのが、気を感じて、眉を優しく振向いた。 「…………」 「姉さんが、魂をあげます。 ……懐紙の、白い折鶴が 掌 ( て )にあった。 「この飛ぶ処へ、すぐおいで。 」 ほっと吹く息、 薄紅 ( うすくれない )に、折鶴はかえって 蒼白 ( あおじろ )く、 花片 ( はなびら )にふっと乗って、ひらひらと空を舞って行く。 ……これが落ちた 大 ( おおき )な門で、はたして宗吉は拾われたのであった。 電車が上り下りともほとんど同時に来た。 宗吉は身動きもしなかった。 と見ると、 丸髷 ( まるまげ )の女が、その 緋縮緬 ( ひぢりめん )の 傍 ( そば )へ 衝 ( つ )と寄って、いつか、肩ぬげつつ裏の 辷 ( すべ )った 効性 ( かいしょう )のない羽織を、上から引合せてやりながら、 「さあ、来ました。 」 「自動車ですか。 」 と目を ( みは )ったまま、緋縮緬の女はきょろんとしていた。 十 年若 ( としわか )い駅員が、 「貴方がたは?」 と言った。 乗り余った黒山の群集も、三四輛立続けに来た電車が、泥まで綺麗に 浚 ( さら )ったのに、まだ待合所を出なかった女二人、(別に一人)と宗吉をいぶかったのである。 宗吉は言った。 「この御婦人が御病気なんです。 」 と、やっぱり、けろりと 仰向 ( あおむ )いている緋縮緬の女を、 外套 ( がいとう )の 肘 ( ひじ )で 庇 ( かば )って言った。 駅員の去ったあとで、 「 唯今 ( ただいま )、自動車を差上げますよ。 」 と宗吉は、優しく顔を 覗 ( のぞ )きつつ、丸髷の女に瞳を返して、 「巣鴨はお見合せを願えませんか。 ……きっと御介抱申します。 私 ( わたくし )はこういうものです。 そのつもりにして、すかして電車で来ると、ここで自動車でないからと言って、何でも下りて、すねたのだと言う。 ……丸髷は某楼のその娘分。 不時の回診に驚いて、ある日、その助手たち、その白衣の看護婦たちの、ばらばらと急いで、しかも、静粛に駆寄るのを、 徐 ( おもむ )ろに、左右に辞して、医学博士秦宗吉氏が、 「いえ、個人で見舞うのです……皆さん、どうぞ。 」 やがて博士は、特等室にただ一人、膝も胸も、しどけない、けろんとした狂女に、何と……手に 剃刀 ( かみそり )を持たせながら、 臥床 ( ベッド )に 跪 ( ひざまず )いて、その胸に額を埋めて、ひしと 縋 ( すが )って、 潸然 ( さんぜん )として泣きながら、 微笑 ( ほほえ )みながら、身も世も忘れて愚に返ったように、だらしなく、涙を 髯 ( ひげ )に伝わらせていた。

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肉がっつり!大勢で楽しむきじまりゅうたさんのパーティ料理

あつ森 たきじま

ヤカンに入れたスポーツ飲料を飲んだことによる銅食中毒が発生しました。 金属製の容器(ヤカンや水筒)は酸性の飲み物と反応し、金属が溶け出すことがあります。 金属製の容器にジュースやスポーツ飲料を入れる時は、注意書きをよく確認しましょう! 銅 食中毒 Retweeted by そういや今日久々に行ったペットグッズのお店の店員さんに「これわんちゃん用のキャーリですよね、猫もいけます?」って聞いたら「ペットキャリーに犬猫用の区別ないんで大丈夫ですよ」と言われた。 なるほど、考えてみりゃそうか。 怪しい…でもオヤツの匂いがしゅる…。 オヤツの匂いには弱いリンダさん。 思うところあり買い物に出る。 今出て2時間くらいで家に戻れば大丈夫な筈。 雲の動き早いですねー。 そちらもお気をつけ下さい!横浜市内も叩きつけるような雨が降り始めた。 戦いが始まる予感。 梅仕事はできなかったので、今年は赤紫蘇ジュースを作る。 こいつで免疫力を上げるとするか。 梅仕事は諦めて赤紫蘇ジュース作るべ。 免疫力アップするのだ。 横浜には無かったっす。 梅も熟すの早いからしょうがないね😭やっと気の休まる休みになったと思って梅仕事しようとスーパー行ったらもう梅なかった…( ; ; )先週まではあったのに…かなぴい。 やまと尼寺くいしんぼ日記をぼんやり見ながらの休日。 もうこれボーッと見ていたい。 金柑の甘露煮の中にチョコレート!真似したい。 おばちゃんだからエコバッグ2つも持ち歩いてる 実はペピィでもらったプレミアムエコバッグも使いたいだけだけど roototeのリュック、だいぶ使ってヘタれたのでもう捨ててもいいかなと思うも土台が丈夫なので私の中のもったいないオバケが発動。 擦れて傷んだところをボロ隠ししながら延命処理。 窓際は朝早くても結構暑い。 床暖房ならぬ床冷房で涼んでからまた偵察に。 大幅アプデは9月からですよー いや、あたしもほぼ理解してねっす。 それでも問題なく遊べてたし。 ふんわりとしかわかってない 最近はペット用乳母車の籠がお気に入り。 でもビビりだからお散歩に行こうとすると全力で拒否ってくる。 ウルトラ内弁慶。 そこはご夫婦でやってるこじんまりしたパン屋さんなんですが、全部買いたいくらいどれも美味いんす。 粉の味、バターの味、ミルクの味、どれもしっかり感じる逸品ばかり。 1が統合されるなら我々箱ユーザーは初めてdestiny無印を日本語でプレイできるということか。 胸熱じゃないか。 近所のパン屋さんで買ったガーリックバターフランスがハンパなくガーリックバターがしみしみで、旨すぎてワイン出した。 本当はビール欲しかった。 そんくらいお酒に合うパン。 Retweeted by 『Destiny 2』2022年までの拡張コンテンツを発表。 初代『Destiny』コンテンツを含むローテーション制度も導入し、続編開発ではなく今作に注力し続ける。 Retweeted by destiny2肥大化しすぎて建て増しした謎豪邸状態なのかwdestinyは1が心の故郷的なとこあるからちょっと嬉しい。 そして謎のエクソ生きてたんかわれーwこんだゴースト連れてるやんかw福岡の友人が保護猫の里親トライアル。 からの正式里親にこのほど昇格。 めでたく嬉しくこれからお祝いを選びに行くのだ。

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